こんにちは!都筑区仲町台の歯科、あおぞら歯科クリニック院長の池田智之です!

みなさんには、離れがたい思い出の品がありますか。

桃沢先生とオートバイで日本一周の旅に出たとき
真白いヘインズに日本地図を書き
行った先を点と線でプロットしていきました。

一ヶ月にわたる旅の過程で
雨風や排気ガスにまみれ
真白だったへインズはネズミ色に変色していきました。

毎日オートバイの走行風ではためいていたそれは
元のサイズよりスリーサイズはゆうに伸び
度重なる洗濯で繊維は抜けていき
うっすらと向こうが透けて見えるようになっていました。

他人からみれば単なるすすけたボロシャツですが
いつでもあの若かりし日にタイムスリップできる
絶対に手放すことができないモノの1つです。

列島縦断.JPG

先日、歯周病によってやむなく奥歯を
抜歯させていただいた患者さんがいました。

御歳とって90近い矍鑠とした紳士です。

少々のことでは痛いとはいわない方でしたが
今回ばかりは我慢の限界、抜歯のやむなきに至りました。

ガーゼを噛んでもらいながら止血を待っている間、
しげしげと自身の抜去歯を眺める患者さんに
「お持ち帰りになりますか?」とうかがうと

「いやいや、いいんですよ。
ただね、戦地で食べるものがなくて
およそ食べられそうなものは何でも口にしたもんです。

今の皆さんじゃとても噛み砕けない硬い物も
生きるためにはバリバリ噛み砕いたもんですよ。

言ってみれば命の恩人なんです、この歯は。」

そういって慈しむように歯を眺めていました。

このような方たちのおかげで
今の日本があるのは間違いありません。

歯科医師になって随分たちます。
今までそれこそ、数え切れないくらいの
抜かれ行く歯を見てきました。

歯科医師にとってはそのうちの一本であっても
その方にとっては、忘れえぬ一本なのかもしれません。

改めて一本の重みを感じた出来事でした。

あおぞら歯科クリニック