都筑区 仲町台 歯科 あおぞら歯科クリニック あおぞら通信VOL.664
こんにちは!都筑区仲町台の歯科、あおぞら歯科クリニック院長の池田えり子です。
この度
私が学生時代にボランティアとして関わらせていただいた
筋ジストロフィーを患う鹿野靖明さんの生涯を描いた映画
「こんな夜更けにバナナかよ」(原作:渡辺一史さん)
が全国公開されることになりました。
札幌で行われた試写会には
当時鹿野さんを支えていたみなさんが集まり
たくさんの思い出話に花が咲きました。
今から20数年前。
鹿野さんとの出会いはたしか
大学生協でふと目に留まったビラがきっかけでした。
初対面で緊張する私に
病床の鹿野さんが、まばたきで穏やかに
対応してくれたのを覚えています。
筋ジストロフィーが進行し
気管切開を終えて人工呼吸器をつけたばかりで
まばたきや指先がコミュニケーションの手段でした。
当時は介護保険も施行されておらず
重度の障害を抱えた被介護者に人生の選択肢は無い時代でしたから
自立生活を送るなど到底許されることではありませんでした。
ですから、鹿野さんが自立生活を望み
それを宣言した時の周りの反応たるや.. 想像に難くないでしょう。
しかし、喧々諤々と意見を戦わせる周囲の反対と心配をよそに
主治医の圧倒的な応援と鹿野さんの強い意志とで
実現に漕ぎ着けたのでした。
本当に天才的に前向きな思考の持ち主でした。
映画の中では面白ろおかしくワガママ放題で
個性が強すぎるキャラクターとして描かれていますが
携帯電話の無い時代に全ての介護者のアポイントを調整し
命をつなぐ毎日は、決して容易いことではありませんでした。
連絡のつかないボランティアさん
多数の人が出入りするストレス
春先の人数不足
バリアフリーとは程遠い世間の厳しさ
夜間の泊まり介助の不足
呼吸器管理などの医療行為の是非…枚挙に暇がありません。
しかし、どのような状況下でも人生を謳歌し
前を向いて歩むその姿と憎めない人柄に
多くの人が巻き込まれ、気づくと鹿野さんに魅了されているのでした。
生前の鹿野さんがよく
「鹿ボラって言ってみればファミリーだよね~
みんな兄弟のような、親子のような…
一緒に笑ったり喧嘩したり…賑やかだよね~ 」
などと笑いながら話していましたが
未だに鹿野さんご実家を訪れる元鹿ボラは後を絶たず
本当に不思議な縁だなぁと思えてなりません。
鹿野さんは決してワガママな人ではありません。
体の自由がきく人なら
好きなものを好きな時に食べるでしょう。
夜中にバナナも食べるでしょう。
コンビニまで買いに走る人もいるでしょう。
当たり前の日常を望んだいただけではないでしょうか。
年々深刻化する医療費の枯渇が叫ばれる中
在宅医療者の増加は誰にとっても他人事とは言えない時代になっています。
それだけに
この映画の公開でより多くの人が在宅医療へ目を向けるきっかけとなり
深い理解と支援の輪が広がることを願ってやみません。
※ 映画公開は28日です!